3Dプリンター光造形方式とは? 初心者でもわかるように解説

3Dプリンターにはいくつかの形式があります。家庭用にも数多く採用されている最も一般的な造形方式は、熱溶解積層方式です。この記事では、それとは異なる3Dプリンターの造形方式「光造形方式」について紹介しています。1980年代にはすでに誕生していたというこの光造形方式とは、どんなものなのでしょうか?

光造形方式とは?

光造形方式は、3Dプリンターの造形方式としては最も古い、1980年代にはすでに誕生していた造形方式です。液体樹脂に紫外線やレーザー光線を当てることで硬化させ、その層を積み重ねることで造形物をプリントアウトします。

この光造形方式を考案したのは日本人の児玉秀男氏。「立体図形作成装置」という名称で、1980年に特許を願い出ています。

しかし、光造形方式の3Dプリンターが販売開始されたのはそれから7年後のこと。アメリカの3Dsystemsが特許を取得し製品化した「SLA-1」が、初の光造形方式の3Dプリンターとなりました。このSLA方式の特許は2006年に失効。これを機にたくさんの3Dプリンターが開発され、現在では家庭でも3Dプリンターが使われるようになっています。

光造形方式で利用可能な材料

光造形方式の3Dプリンターでは、エポキシ、もしくはアクリル系の樹脂材料を使用可能です。

エポキシ系樹脂

エポキシ系の樹脂材料でよく使われている材料は「PPライク樹脂」や「ABSライク樹脂」でしょう。

「ライク」は「~のような」という意味ですが、これらがPPABSの代替になるのかというとそういうわけではありません。

PPライク樹脂は、PP(ポリプロピレン)に近い衝撃や熱への強さを持つ樹脂です。

同じく、ABSライク樹脂はABSに近い衝撃や熱への強さを持ちますが、強度の点ではABSに少し及びません。

アクリル系樹脂

アクリル系樹脂はバリエーションが豊富です。一部の樹脂は透明度が高いため、透明な造形物を作ることができます。もちろん、3Dプリンターから出力するだけでは足りません。造形後に磨いたりコーティングしたりすることで、透明な造形物を作れます。

そのほかの材料

光造形方式の3Dプリンターでは、ゴムのようなゴムライク、ワックスのような樹脂など、さまざまな樹脂材料を利用して造形物を作ることができます。ただ、製品により対応している樹脂は異なるので、利用したい樹脂がある場合は、3Dプリンターが対応しているかどうかを、まずはチェックしなければなりません。

光造形方式の3Dプリンターのメリット

それぞれの造形方式にメリットやデメリットがあります。光造形方式の3Dプリンターには、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?まずは、メリットのほうから検証してみましょう。

造形精度に優れる

光造形方式で造形する際は、材料を高温に熱する必要がないので、熱による伸び縮みが発生せず、結果、精度の高い造形が可能になります。一般家庭でも使われている熱溶解積層方式だと、どうしてもこの熱による材料の変化が起きてしまい、造形精度が低下しまうことがあります。

造形速度が速い

光造形方式は、造形速度が速く、生産性に優れる造形方式です。光造形方式の中でも特に造形速度が速いのがDLP方式と呼ばれるもの。この方式では、複数の造形を一度に行うことが可能です。SLA方式という別の光造形方式も、ほかの造形方式よりスピーディーに造形を進められます。

仕上がりが美しい

光造形方式は、一般的な熱溶解積層方式と比較すると、造形物の表面をスムーズに仕上げることができます。熱溶解積層方式だと、どうしても積層痕が目についてしまい、粗い仕上がりに見えてしまいます。造形物の表面が美しく仕上がっていると、研磨や塗装といった造形後の工程で美しく仕上げやすいこともメリットだといえるでしょう。

光造形方式が模型の造形によく使用されるのは、このためです。

大きな物も高い精度で造形可能

光造形方式の3Dプリンターなら、大きな物でも、高い精度で造形することが可能です。しかし、光を下から当てるタイプの3Dプリンターだと、造形中に造形物が落ちてしまうことがあるので、細心の注意を払って作業しなければなりません。

透明な物を作れる

光造形方式なら、アクリル系樹脂を材料にすることで透明な物を作れます。当然、後処理はしなければなりませんが、これは熱溶解積層方式の3Dプリンターでは実現不可能なことです。

光造形方式のデメリット

無敵にも見える光造形方式ですが、当然ながら弱点もあります。今度は光造形方式のデメリットについて検証してみましょう。

保管コストがかかりがち

光造形方式では、光で硬化する樹脂を使って造形します。しかし、この樹脂はデリケートで、3Dプリンターから発せられる光以外の光に感光して硬化してしまうことがあるため、冷暗所にて保管しなければなりません。そのため、量や種類が増えると、樹脂を保管するコストがかさんでしまいます。

造形物が日光の影響を受けやすい

光造形方式では、紫外線により造形物を固めます。そのため、できあがった造形物も日光に対してデリケートです。長い間、日光を浴びるような場所に置いておくと、変形してしまうことがあるので注意が必要です。

造形後の処理が面倒

光造形方式により作られた造形物は、その後の処理がやや面倒です。まず、やらなければならないのが洗浄作業。洗浄に使う液体は、自治体のルールに則って適切な方法で処分しなければなりません。サポートを除去する作業も、サポート部と造形物の素材が同じなので、専用サポート材を使える3Dプリンターよりも面倒です。

光造形方式3Dプリンターのおすすめの利用法

精度や仕上がりに優れる光造形方式の3Dプリンターは、以下のようなシチュエーションで利用すると、その性能をいかんなく発揮してくれるはずです。

プロトタイプ作成

光造形方式の3Dプリンターは、プロトタイプ(試作品)の作成に向いています。試作品を作成し、パーツ同士の組み合わせや機能のチェックなどに利用することが可能です。

アイデアをすぐに形にするラピッドプロトタイピングにも、3Dプリンターは大いに活躍してくれるでしょう。

金型作成

光造形方式の3Dプリンターなら、金型も容易に作成できます。ただし、しっかり二次硬化させないと、金型に流し込む樹脂と反応してしまい、金型として働いてくれないので注意が必要です。

ワックスモデル作成

光造形方式の3Dプリンターなら、アクセサリーなどのパーツの原型になるワックスモデルをかんたんに作れます。

治具や工具作り

3Dデータがあれば、製品専用の治具や工具をかんたんに造形できるので便利です。しかも、光造形方式なら、耐久性の備わる、精度の高いものを作れます。

フィギュアや模型の造形

光造形方式の3Dプリンターは、造形物の美しい仕上がりが大きな魅力。これはフィギュアや模型の造形には、とても優れたアドバンテージです。光造形方式の3Dプリンターなら、プロトタイプだけではなく、このように最終製品の造形も難なくこなします。

まとめ

光造形方式の3Dプリンターについて、メリットとデメリット、利用可能な材料などを含めてご紹介しました。光造形方式の3Dプリンターは、精度の高い造形ができるため、プロトタイプから最終製品の造形まで、さまざまなシーンで利用することが可能です。造形物は紫外線に弱さがあるため、ある程度、用途は限られますが、室内で利用するのであれば強度的にもそれほどの問題はありません。